そして買取に前向きになれる考え方

おかげでガリバー自動車流通研究所調査によると、2005年5月時点でレクサスを知っている人は男性が約8割、女性が約6割と高認知度を獲得している。 これだけの投資と手間暇をかけた結果、レクサスの販売台数はどうだったのだろうか。
オープン前は日本車での高級車戦略はうまくいくはずがない!という厳しい声も多かったが、大方の予想に反してオープンからレクサスは好調なスタートを切った。 当初3カ月間で約8100台を売り上げており、外部に公表していた販売目標は上回っている。
もちろんレクサスへの開発投資、販売店や従業員教育への投資金額を考慮すれば、社内的にはまだまだ満足のいく立ち上がりではないだろうが、まだ本格スタートして間もないが「レクサス」からは、いくつかの「ラグジュアリー・マーケティング」の視点を学ぶことができる。 まず「販売商品を絞り込んで、専用販売チャネルを確立していること」。
今回の日本国内でのレクサスブランド導入にあたって、販売商品はGS、SC、ISの3種類(2006年には1Sの投入により4種で、この販売商品のみを展示・販売する専用のショールーム販売店を新たに設立した。 レクサスはいうなれば専門店型だろう。
従業員は多くの車種についての幅広い知識ではなく、限られた車種の深掘りした知識を持てばいい。 接客活動を重ねれば重ねるほど、より専門的な知識やスキルはどんどん蓄積されていき、顧客のあらゆる相談・問いかけへの対応レベルがどんどん高くなる「天使のサイクル」がまわっていくことになる。
次に学ぶべき点は「高級品を販売しているのではなく、高級サービスを販売していること」である。 プロダクト・プライス・プレイス・プロモーションから成る4Pというマーケティング用語がよく知られているが、レクサスに置き換えれば、プロダクトは最高峰技術を駆使したプレミアムカー、プライスは高級外車並みの高価格帯、プレイスは豪華な専用ショールーム販売店、プロモーションはマスメディアを駆使した集中出稿による認知度アップというところだろうか。
レクサスの場合、「メーカーが開発・生産した高級品を販売する」というより、レクサスを販売することは「レクサスという高級サービスを提供する」ことととらえた方がしっくりくる。 そういった意味ではレジャー施設や飲食店・美容院・エステサロンといったサービス業ととらえるべきであろう。

レクサスを「サービス業」と捉えた場合、サービスミックスは4Pに加えて、店舗や看板、備品などの物的環境、販売員や受付嬢などの人材、興味を喚起して消費(購入)に至るまでの提供過程(プロセス)などが加わっている(マーケティング論では7Pとか8Pと呼ぶ)。 レクサスは、このサービス・マーケティング・ミックスの全てに「ラグジュアリー」を妥協することなく徹底している。
既存販売店で高級車を売るとか、既存の販売人材で高級車を売るといった中途半端な取り組みはしていない。 トヨタ高級車ブランドに見合うラグジユアリー・マーケティングを一点の曇りもなく、ゼロから築き上げようとしている。
数年後、 結果は別として、大きな勝負をかけた潔さを感じることができる。 ここで思ったように来場者が集まらず売上台数も伸び悩んだ時に、大幅な値引きをし、チラシを使って「来場したら景品キャンペーン」を展開してしまえば、築き上げようとしているブランドの牙城は一気に崩れてしまう。
いかに当初のサービスレベル水準を我慢強く一貫して維持できるかだろう。 全国で143拠点もの豪華なショールームという、「フリーアクセスなリレーションポイント」を確立したことも特筆すべき点であろう。
ニューリッチは最も都市部に多く生息しているものの、全国に点在している。 芦屋や田園調布といった金持ちが多く住む場所に居住しているとも限らない。
1章で述べたように、職業は経営者や医師とも限らず、高収入のサラリーマンだったり、共働き夫婦であったり、管理職の独身キャリア女性で乗り換える人だったりとニューリッチ像を特定化・具体化するのは難しく、生息しているところをピンポイントで把握するのは難しい。 彼らは名簿会社で売買される「高額品を買う顧客リスト」に載っていないことが多いし、個人情報保護の流れもあって顧客情報を得るのも難しい。

彼らはリッチだし使えるカネがある。 消費意欲もある。
だけど昔からの金持ちや名家じゃないから、外商員も訪ねてこないし、高額品のダイレクトメールもこない。 親や親戚など人的な紹介も少ない。
もはや事業会社が金持ちを探し出して、直接コンタクトをとって、家までセールスに行くこと自体、非常に手間隙も労力もかかる。 ニューリッチほど探し出す手間や労力がかかる。
彼らをこちらから探し出すより、彼らがアクセスしてくるリレーションポイントを作ってそれを、パブリシティを使って宣伝・認知させるほうが効率的な場合もある。 レクサスの場合、全国143拠点もの豪華なショールームこそが、ニューリッチがアクセスしてくるリレーションポイントである。
「ニューリッチをこちらから探し出す」のではなく「ニューリッチにこちらに来てもらう」戦略である。 最後に、あくまでも私見ではあるが、リッチな人が自分のリッチさを示すために、良い家に住み、良い車に乗り、ブランド品を持つという消費傾向は確かにある。
ニューリッチが台頭することで、今度はリッチな人たちの間での差別化・競争が生まれることになる。 「金持ちが乗る車はベンツかサス」は高級車の品揃えの一つになるだろうし、「人とは違う持ち物、嗜好」を求める心理をくすぐることにもなる。
もう一つ、明確な「金持ち」の基準がある。 自宅に家政婦がいるかどうかだ。
(奥様が専業主婦にもかかわらず)家政婦さんが毎日いるとなると、文句なく「あの家は金持ち!」になる。 家政婦といっても通いの場合と住み込みの場合とがあるが、日当の相場は9000〜1万5000円(かなり幅がある)、フルタイムの家政婦を雇うとなると月30−45万円は必要になってくる。

サラリーマンの丸々一か月分のサラリーに相当するため、庶民とは無関係といわざるを得ない。 もちろん毎日ではなく半日だけ来てもらうとか、週3回だけ来てもらうことも可能ではある。
家族の入院期間中だけ付き添いとして「やむなく」利用するのは別として、たとえお金持ちでも家政婦さんを頼むのは、立派な1戸建て・高級車が数台・カネのかかるお稽古事・ブランド品などが満たされた後の、最後の最後の「おカネの使い道」である。 掃除や洗濯を他人に頼むのはもったいない、そうしていることを人に見られて陰口をたたかれるのはイヤという意識はまだまだある。
家政婦の歴史は長く、いつの時代もお金持ちは一定の数だけ存在してきたにもかかわらず、「家政婦マーケット」が右肩上がりに伸びていかなかったのは、この「おカネを出すのはもったいない」という価値観の存在であろう。 日本では、掃除や洗濯といった家事を、おカネを出してまで他人に頼むということはニューリッチの台頭によって需要が急拡大しているのは、この「究極の費沢」である家事サービスを、おカネを出して人に頼む「家事代行サービス」である。
ちなみに家政婦さんは家政婦紹介所から紹介される仕組みだが、家事代行サービスは事業者との請負契約によってサービス員を派遣してもらう仕組みである。

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